日本山岳会福島支部のブログ

日本山岳会福島支部の活動を掲載する

IMG_1359
杉田林ブナ原生林の中で

 2024年3月3日(日)福島支部月例山行第一弾として、積雪期でないと中々行けない安達太良山中の貴重なブナ林を通り爆裂火口の淵にある船明神山(1,667m)を訪ねる山旅を実施した。
この登山ルートはあだたら山域でもかなりレアーなトレッキングルートとして、基本積雪期でないと訪れることのできない貴重なブナ原生林に加え、その後150mの急登のすえに安達太良エリアでは珍しいアオモリトドマツの群生地を通り、展望の開ける森林限界から30分ほどで安達太良火山の爆裂火口に至る素晴らしいスノートレッキングルートである。

<山行状況>
 この日は2日前の南岸低気圧による雪が30㌢ほど積もった後に昨日の冬型の雪が混ざり合い、合わせて50㌢ほどの積雪量となったため、スノーシューでも膝下までのラッセルを強いられた。
時間も当初予定していたコースタイムを大幅に超過してしまい、杉田林のブナ林に到着したのも11時を回っていたため、この先の急登から森林限界に到着するのも13時を越えてしまう予想となったのと、一方先日からのニュースでも各地で雪崩による死者も出ている報道もあることから、今後の疲労と安全を考えてこの先の急登を断念しここから下山することに決めた。
 そのような訳で杉田林のブナの主の袂でゆっくりと昼食を摂る。下山は登りのトレースを軽快に下り13:30無事出発地点の駐車場に到着した。今回は船明神山の山頂を踏むことはできなかったが、楽しみを後に残し、大自然を堪能できた有意義な登山であった。
写真で登山の様子を振り返る。
IMG_1388
ラッセルを交代しながらたどり着いた巨大なブナの前で
(杉田林ブナ林の入り口のブナの主の前での一枚)

IMG_E1351
更にブナ林に分け入ってゆく

IMG_E1396
今年は異常な雪の少なさ、2月の高温ではこの辺の雪も消し去ってしまっていたようである。例年の3分の1もないくらいで、手前の小さな灌木や笹が見えるのも不思議なくらいである。

IMG_E1398
IMG_E1400
ブナの主の前に土俵のような円陣を作りゆったり昼食タイムと相成った。

IMG_E1404
「この兎のような、はたまた(V)o¥o(V)星人のような代物は何だ!!」と一瞬叫びましたが、すぐにネットで調べたらこれはオオカメノキの冬芽だとわかりました。周りに目を止めて自然観察してみると意外に面白いものがありますよ。がお~っ!
IMG_E1405
スックと立ち上がったカラマツ林、ここは人工林か
(下山途中で)

IMG_E1409
角度を変えて撮影していますが、奇麗なキノコが枯れ木に花を咲かせていました。サルノコシカケの赤ちゃんにも見えますが、「これは新種だこれは絶対新種だ!」と叫ぶ会員さんが。まーそんなことはないとは思いますが、とにかく自然の森にはいろいろと楽しいものが満ち溢れています。皆さんも雪山に出かけて思いっきり楽しんでみましょう。


                          写真・文 佐久間隆夫








IMG_1048
万世大路二ツ小屋隧道福島側坑口で記念撮影

2024年2月13日(火) 2月支部山行計画の合間ではあったが、天気予報で14日以降の異常高温予報が出たため氷柱の崩落前にぜひ探索したいとの要望が出されたことから急遽福島市内のJACメンバーのみではあるが皆さんにお声がけをし、探索を実施することとなった。
氷崩落の危険を避けるため、早朝の探索とすべく7:00福島市内出発し、国道13号線(2世代万世大路)東栗子トンネル前を7:45登山開始した。
早朝という事でもあり雪も氷も安定しており絶好の探索日和となった。そんな訳で時間もたっぷりあることから、今回は二ツ小屋隧道氷柱探索に加え、昨年雪庇の張り出しで登山を断念した隧道上部のスノートレックを計画に入れた。またこの場所は現在調査中の古道「万世大路」の正にその現場でもあり、栗子山と明治期万世大路の道筋を尾根上から確認したい想いも強かったこともあって是非行ってみようということになり実施の運びとなった。

IMG_E1025
登山開始後中間点で一服
IMG_1048
隧道入り口で記念写真

二ツ小屋隧道前で記念写真を撮ったあと、気温が上がる前、早々に氷柱探索にトンネル内に。
今年は、夏場の猛暑と渇水の影響か地下水は少なめなのと、1月からの暖冬の影響で氷柱の直径は細く、地上に届いていない氷もあり崩落の危険があるため氷からは間合いを取って探索した。一方でそれなりに繊細な氷の造形を観察でき、奇麗な写真もたくさん撮ることができた。今ではこの時期の知られた探索地となっている。
隧道が大改修された昭和10年から90年の年月を経て、老朽化した壁から地下水が染み出し現在の姿になっている。以下写真を添付いたしますのでご覧ください。
IMG_E1035

IMG_E1036

IMG_E1037

IMG_E1038

IMG_E1034

IMG_E1033

今年は、大氷柱は無いものの、大きなつらら状の氷の造形が外の光やフラッシュの光に複雑に反射し緑がかって映っているのはとても神秘的であった。今回は隧道の山形県側まで足を延ばした。

IMG_E1042
山形側坑口付近の氷柱。大量の地下水がほとばしっていた。

IMG_E1039
山形側坑口で撮影。渡部支部長と清野義美氏

二ツ小屋隧道探索の後は、いよいよトンネル上部の尾根に取付く。最初は緩やかであるが標高を上げるにつれて急傾斜となる。真上にはやはり大きく雪庇が張り出しており直進は難しく右へトラバースし雪庇を越えられそうな場所を探す。ここは右下がりの急傾斜でスノーシューでの通過には神経を払った。ようやく850mピークの右鞍部に尾根への道を見つけ、清野さんのラッセルで雪庇を切り崩し突破した。尾根上は西風が強かったが非常に歩きやすい。積雪が少ないため西側にブッシュが多く、小枝越しに栗子山は確認できたものの、明治期万世大路の道筋ははっきりとは確認でなかった。ひとまず雪庇の窪みに身を寄せて皆で昼食を摂った。
IMG_1077
ここで昼食を摂り元気回復! いざ尾根の850mピークへ

当初は、850mピークの南側にある947mピークへ行く予定であったが、藪漕ぎや時間的に難しいと判断し850mピークを最終目的地とした。ピークからは素晴らしい絶景を堪能できた。南には吾妻連峰の山並と安達太良の最高峰箕輪山、東には広大な阿武隈山系、北にはこの山塊での最高峰989ピークが聳え立っていた。しばし景色を堪能した。
IMG_E1087
ピークから望む吾妻連峰
IMG_E1111
雪庇と吾妻連峰バックにに渡部支部長、佐藤一夫、清野義美両氏
IMG_E1113
広大な阿武隈山地、左の台地上の小高い山が霊山だ
IMG_E1108
雪庇の全体像
IMG_E1085
吾妻、安達太良の全容

下山は、来た道をワイワイガヤガヤと山話題で盛り上がりながら降りた。また隧道からはそれぞれ思い思いのルートを雪蹴散らしながら童心に帰って今日一日を満喫して今日のトレッキングを終えることができた。

                  写真及び文 佐久間隆夫








IMG_1220
鉄山山頂に集う

2024年2月18日、2月支部山行第2弾として安達太良連峰箕輪山から鉄山を越えて安達太良山山頂を踏み薬師岳に下る全長12㌔の縦走登山を有志6名で実施した。
当日は、この山域でも滅多にない好天の中日本海側の箕輪スキー場を起点に安達太良山の分水嶺主稜線を縦走し太平洋側のあだたら高原スキー場に下る魅力満載のルートだ。

<登山行程>
箕輪スキー場(8:30始発) Cリフト上駅1,370m(9:00) (9:30)Aリフト上1,470m(9:40) (11:00)箕輪山山頂1,728m(11:10) (11:50)鉄山避難小屋1,680m(12:20) (12:30)鉄山山頂1,709m(12:40) → (13:40)安達太良山山頂1,700m(13:50)仙女平通過(14:20) → 薬師岳1,322m(15:00) →五葉松平1,320m(15:40) →仙女平通過(14:20) → 薬師岳1,322m(15:00) →五葉松平1,320m(15:40) →(16:30)安達太良高原スキー場レストハウス


Cリフトにより登山出発点(1,370m)まで移動。ここで各自スノーシュー、ワカンを装着し装備及び体調の確認をしたのち出発。途中の鉄山避難小屋で体調の再チェックを行い疲労激しい場合は引き返すこと
を条件に登山を開始する。
安達太良山系は、どちらかと言うと中通り地方に接し雪が少なく、暖冬時は特に東側は顕著である。今年は暖冬甚だしくあだたら高原スキー場は地肌が露わになっていた。
箕輪山への直登はブッシュが多く不可能とみてAリフトの山頂駅に向かい、ブッシュを避けながら山頂へ向かうルートを取る。西側の景色が素晴らしい、飯豊連峰も吾妻連峰も手に取ることができるほどすぐそこだ。
IMG_E1205
Aリフト上駅で一服。ここから急登が始まる。
IMG_E1206-3
ブッシュの合間を縫い高度を稼ぐ

雪質は硬く締まっていて数日前の異常高温で雪が解けそれが固く凍ったような状態である。皆のスノーシューは接地面に金属の歯が付いているタイプのものだったためスリップは避けられていた。お昼ごろまでは氷点下との予報であったため雪面が硬いうちに鉄山までの行程を終えるペースで進んだ。

IMG_E1206-6
超硬い雪面を行く
IMG_E1206-9
間もなく山頂近く。このでこぼこの下は灌木帯

いよいよ箕輪山頂だ。風はないと言ってもやはりここまで来ると冷たい西風が身に染みる。しかし周りはどこまでも視界が効き、北に蔵王や吾妻連峰、西に飯豊連峰、磐梯山、越後駒、会津駒、燧ヶ岳、南に那須連山、東には阿武隈山系と360度遮るものがない。足元はクラストした雪、雪山ならではの風景が広がっていた。見れば阿武隈山系は全く雪がない。安達太良山のある奥羽山脈が気候の境目であることが良くわかる。箕輪山の山頂は広くなだらかである。一服したら鉄山に向かう。
IMG_E1208
磐梯山をバックに箕輪山山頂で記念撮影

IMG_E1208-5
ここから一旦150mほど下り鉄山へ登り返す
IMG_E1208-6
鉄山との鞍部に向かって下降開始

鉄山へはまず鞍部まで一旦下りその後登り返すが、雪が多ければスキーゲレンデのように埋め尽くした高森川の支流を樹氷を楽しみながら悠々と登ってゆくのであるが、今年は雪も少なく樹氷もないため夏道に沿って進む。よって鉄山北側の急登を一気に登り鉄山避難小屋経由で鉄山へと向かうこととなった。鉄山山頂からの風景は今までと一変する。高度感のある荒々しい火山地形の雄大さの絶景に皆魅了されてしまった。ここで全員の体調チェック。全員体調も良く疲れもないことから安達太良山に前進することにする。

IMG_E1208-10
間もなく鉄山山頂

IMG_E1208-13
鉄山山頂に立つ

IMG_1220
鉄山山頂で記念撮影
IMG_E1238
鉄山からの矢筈ノ森と奥に安達太良山

鉄山からは、雪壁の急な下降やトラバースや氷雪のアップダウンが続くため、安全のためスノーシューからアイゼンに履き替えて前進する。
IMG_E1240
鉄山をバックにしての一枚

IMG_E1240-2
矢筈ノ森の雪壁を行く
IMG_E1242
くろがね小屋、峰ノ辻分岐の丘ここからの眺めが結構良いIMG_E1243
丘からの眺め、安達太良爆裂火口
ここから安達太良山山頂までは約30分。なだらかなクラストした稜線を進んでゆく。本来ならばこの辺は強い西風のさらされる場所でエビノシッポやロックモンスター(樹氷の岩バージョン)が奇麗にできるところなのだが、今年は暖冬で3日前の異常高温のためすべて消滅してしまった。いよいよ安達太良山山頂は近い。
IMG_E1243-3
正面に安達太良山山頂を見据えて進む

IMG_E1243-2
乳首(安達太良山の愛称)根元を通過

IMG_E1249-2
安達太良山頂で記念撮影(撮影者東海林氏)

下山は、仙女平経由で薬師岳へ。そこから五葉松平を通りあだたら高原スキー場へ下るルートを取った。スキー場は2月の掻き入れ時だというのに雪不足で深刻のようだ。やはり冬はたっぷり雪があって雪の造形美が見られるのがいいと思う。次期シーズンに期待しよう。
薬師岳からの安達太良連峰
薬師岳から望む安達太良連峰

雪のないゲレンデ
雪のないゲレンデ。2月とは思えない光景だ

今回ルートの軌跡
今回歩いたジオグラフィカの軌跡

             写真 : 大島省吾 佐久間隆夫 東海林広尚
             文  :    佐久間隆夫





↑このページのトップヘ